東京大学社会情報研究所 文化研究プログラム 第1回ワークショップ

ISICS Cultural Studies Program 2001 Work Shop 1
2001年5月14日(月) 午後6時-9時

FOR A TRANSFORMATIVE WORK: on the current condition of the developing network of cultural studies in Asia


東京大学社会情報研究所文化研究プログラムでは、2001年度からプログラムを立ち上げていくにあたり、下記のようなワークショップを企画いたしました。日本およびアジアにおけるここ数年のカルチュラル・スタディーズの状況を捉え返し、これからの研究ネットワークを考えるのにいい機会になろうかと思いますので、ご多忙とは存じますが、ご関心をお持ちの方は、ふるってご参加くださいますようお願い申し上げます。


吉見俊哉
東京大学社会情報研究所 文化研究プログラム

開催趣旨

1996年3月に東大社会情報研究所が国際シンポジウム「カルチュラル・スタディーズとの対話」を開いてから、すでに5年が経過しました。この間、我々の試みへの批判、やや表層的なレベルでの「カルチュラル・スタディーズ」のブームとこの流れへの諸方面からの反発、若い研究者の間へのカルチュラル・スタディーズの浸透、いくつかの入門的な本や翻訳の出版、Inter Asia Cultural Studies や Traces のようなアジアの文化研究や批判理論を横断していくいくつかの試みの船出など、日本やアジアにおけるカルチュラル・スタディーズの状況は、一部のマス・コミュニケーション研究者に新しい受け手研究として受容されていた95年頃までとはまったく違ったものになってきました。
この間、日本においても、たとえば八王子大学セミナーハウスでのカルチュラル・スタディーズのワークショップ、それに参加した大学院生たちを主体としたCSF(カルチュラル・スタディーズ・フォーラム)の活動、Inter Asia Cultural Studies 誌による九州大学での国際会議(2000年12月)Transitional Era, Transformative Workモ の開催、アジア太平洋地域における大学院生たちまでを含めた様々なクリティカルな知のネットワークの形成や発展等々、96年の時点では予想もできなかった新しい知的実践の地平が広がってきています。そのような現状を踏まえるとき、私たちはこのあたりで、この数年間でどのような新しい芽がアジアのカルチュラル・スタディーズや批判的研究に生まれてきつつあるのかを、再確認してもいい時期に来ているように思うのです。
ちょうど社会情報研究所では、今年度から、研究所として基幹的に取り組む研究プログラムの1つとして、文化研究のプログラムを立ち上げます。全力を挙げて開催に奔走した96年のシンポジウム以降、研究所ではカルチュラル・スタディーズに対し、継続的・組織的な取り組みよりも、散発的・個人的な取り組み(L・グロスバーグ氏を迎えてのシンポジウムなど)に重心を置いてきました。しかし、日本の国立大学をめぐる状況が大きく変化しつつあるなかで、メディアやコミュニケーション、文化に対し、理論的にも実践的にも批判的な知を創造していくための足場を守り、育んでいくためにも、そろそろ研究所の基幹的なプログラムとして、カルチュラル・スタディーズや批判的なメディア研究のトランスナショナルな広がりに対してより継続的な取り組みをしていく必要があると考えるに至りました。また、このような取り組みのなかで、現代のグローバル化する状況のなかでメディアや情報の問題を捉えていく視座を、文化の政治学ポリティカル・エコノミーの視座をつなぐような仕方で示していきたいとも考えています。
今回、Chen Kuan Hsing氏とChua Beng Huat 氏が来日されるのを受けて、急遽開催を決めたこのワークショップは、そのような社会情報研究所の新しい取り組みの第一歩を踏み出そうという思いからの試みです。プログラムにありますように、ここでは最近のカルチュラル・スタディーズにおける3つの活動、昨年12月に九州大学で開かれたアジアのカルチュラル・スタディーズの国際会議とここ数年、大学院生たちを中心とする脱領域的なネットワークとして活動を進めてきたカルチュラル・スタディーズ・フォーラム、そしてこの4月に姜尚中氏の大学院ゼミを中心に日韓の大学院生たちがソウルで催したワークショップについて報告をしていただき、Chen氏とChua氏のレスポンスを受けて、アジア太平洋のコンテクストのなかでのメディアや文化の批判的研究のトランスナショナルな活動の現状を検証し、将来を展望していきたいと考えています。

日 時 2001年5月14日(月)18:00-21:00
場 所 学士会館分館(本郷) 6号室
プログラム 18:00-18:10 開催の趣旨説明
  18:10-18:30 報告1 IACS福岡会議に参加して 本山謙二+村井寛志+高媛
  18:30-19:00 報告2 CSFの活動の展開     長尾洋子+清水知子
  19:00-19:30 報告3 日韓院生WSに参加して  玄武岩+宮原理恵
  19:30-19:50 応答1 Kuan Hsing Chen
  19:50-20:10 応答2 Chua Beng Huat(交渉中)
  20:10-21:00 オープン・ディスカッション
司 会 姜尚中吉見俊哉
主 催 東京大学社会情報研究所 文化研究プログラム
問い合わせ 東京大学社会情報研究所 吉見俊哉研究室